第12章 白妙の策略
目的の階でエレベーターが止まり、部屋に案内される。
そこは、どうやら普通のマンションのようだ。
(普通と言っても、いい所のようではある)
一番端の部屋の前まで来ると、風見さんがインターフォンのボタンを押す。
ガチャガチャと、いくつかの鍵が開く音がして、扉が開くと、中にいたのは零だった。
「おはようかおりさん、風見も」
「おはよ・・・零?」
「では自分はこれで失礼します。降谷さん、こちら・・・葵さんのスマートフォンです」
「ありがとう風見・・・」
来た道を去っていく風見さん。
目の前の零は・・・なんか、えらくラフな服装だ。
「早く入って」
「う、うん」
中に入ると、零はまたガチャガチャと何個もの鍵を締める。
玄関には男性物の靴が数足・・・
奥に案内されると、普通に生活感がある部屋で妙に落ち着く雰囲気。
もっと、無機質で冷たい部屋を想像してたから。
「好きに使ってくれていいからな」
「ありがとう・・・でも本当にあるんだね、セーフハウスって」
「ここは僕の家だ」
「は・・・?どういうこと?」
「かおりさんを家で預かるなんて言ったら、沖矢さんは出してくれなかっただろ?」
「なんでまたそんな・・・」
「こうすればかおりさんと一緒に居れると思ったから・・・もちろん、ここだってセキュリティは完璧だ。いいだろ?」
「ちゃんと匿ってもらえるんならどこでもいいよ・・・」
「なんだよ・・・せっかく二人で過ごせるのに。まあ僕も暇では無いから。僕がいない間は風見を隣の部屋に待機させる。何か用があったらコレで風見に連絡して」
携帯電話を手渡される。それから、わたしのスマートフォンも。
「スマホ使っていいの?」
「構わないよ、僕はかおりさんを信用してるから。それにかおりさんは、僕の家に居るだなんて・・・沖矢さんには言わないだろ?」
「言えないよ・・・」
ここで暮らす上でのその他注意事項を一通り説明されると、零は「着替えてくるから」と扉の向こうへ入っていった。
・・・まさかこんなことになるとは。
秀一さんのことを考えると頭が重たい。
零と過ごすことが、嫌ではない自分が、嫌だ。