第12章 白妙の策略
セダンの後部座席に乗せられ、風見という刑事と二人きりになる・・・
「葵さん」
「はい」
「降谷さんはあなたの事をかなり信頼されているようですが、自分は違います。申し訳ありませんが今から連れていく場所をあなたにはお教えできかねますので、これを付けてください」
アイマスクを手渡される。
「それから、発信機等を付けていないか調べさせて頂きます」
「大丈夫ですよ?何もありませんから」
「それは自分が確認します」
機械をかざされたが、もちろん反応は無い。
「では、スマートフォンを預かります」
「え!電話できなくなるんですか!」
「降谷さんの許可を得てから、使用してください」
「そう・・・零にはいつ会えますか?」
「すぐに会えます」
しぶしぶアイマスクを付けると、車が発進する。
視界が無くなり、昨晩寝足りてないのと、朝食を食べてすぐなのと、心地よい車の振動が相まって、すぐに眠気に襲われる・・・
わたしって緊張感ないのかも・・・
いつの間にかぐっすり眠っていた。
気付いたときには車のエンジンは止まっていて。
風見さんに起こされる。
「葵さん・・・葵さん」
「ぁ・・・」
「マスク取られても構いませんよ」
「はぁーい」
そこはどこかの地下駐車場だった。
「着きましたから、降りてください」
車から降りて風見さんの後に続いて歩く。
「先程家にいらっしゃった男性はあなたの恋人ですよね」
「そうです」
「降谷さんは浮気相手ということですか」
「えっ?」
「降谷さんを弄ぶつもりなら、辞めていただきたい」
「あの・・・」
どちらかと言うとわたしが振り回されてると思うんだけど。
エレベーターの前で止まり、乗るように促される。
風見さんが押したボタンの階数は、二十五階。ここは高層マンションなのか?
「自分の知る限り、降谷さんとここまで親しくされている女性はあなたが初めてです」
「職業柄大変そうですもんね」
「正直、一番降谷さんに近いのは自分だと自負していたんですが・・・最近の降谷さんはあなたの事ばかり気にされていて・・・」
「あの・・・風見さん、零のこと好きなの?」
「好きだなんて言葉だけでは言い表せません」
零は、部下に溺愛されているようだ。