第12章 白妙の策略
翌朝。
まだ外が暗い時間に、秀一さんの声で起こされる。
「起きろ、かおり」
「・・・ん・・・ぇ・・・もう?」
「迎えが来る前に風呂入りたいだろ?」
「ぁ・・・うん」
「準備してあるから、入れ」
昨晩散々抱かれて疲れきって、そのまま秀一さんのベッドで寝てしまったことを思い出す・・・
ベッドから這い出ると、彼は沖矢昴の変装をし始めていて。
なんでこの人は昨夜あれだけ動いてこんなに朝早くから元気なのか。つくづく体力差があるのを感じさせられる。
脱衣所で服を脱げば、秀一さんに付けられた沢山のキスマークが目に入り、また昨日の行為が脳裏に蘇る。
ブンブンと頭を振ってその記憶を隅へ追いやり、急いでお風呂を済ませた。
出掛ける準備を整えてリビングへ向かうと、昴さんになっている秀一さんが朝食を用意してくれていた。
「何から何まですみません・・・」
「昨日は随分疲れさせてしまいましたからね。お詫びの気持ちも少しあります」
どうやら、彼は既に昴さんモードに切り替わっているようだ。
「おかげさまで・・・じゃあ、いただきます」
「どうぞ。向こうに行ったら、彼に伝える事、覚えてますよね?」
「大丈夫です。早く帰って来れるといいなぁ・・・」
食事を終えて、外が明るくなりかけてきた頃、玄関のチャイムが鳴らされる。
昴さんが対応しに出ていく。
間違いなく公安の人間だと確認できたら、わたしを呼ぶことになっている。
「かおりさん、大丈夫です」
「はーい!」
スーツケースと鞄を手に持ち玄関へ。
わたしを迎えに来た人は、前に零と出掛けた時に見た、公安の刑事だった。たしか風見とかいう。
挨拶を交わして、靴を履こうとする。
「かおりさん」
昴さんに呼ばれ、振り向けばふわりと抱きしめられて。
頭を撫でられながら「行ってらっしゃい」と、小さな声で言われる。
「行ってきます」と顔を上げ言うと、昴さんの唇が降りてきて。
よく知りもしない人の前でキスを交わして、家を出た。