第11章 再会する彼ら
ベルモットを車から降ろした後、自然と次の行く先は米花町に向いていた。
僕が組織の人間達の弱みを握りたいのと同様、ベルモットだって僕の弱みを握りたい筈。
かおりさんに危険が迫るかもしれない事を早く伝えなければならない。
電話やメールではどこで誰が盗み見しているかわかったもんじゃないから、やっぱり直接会って言わねばならない。
かおりさんの住んでいる家の近くまで来て、電話をかける。
道交法違反なんて、この事態だ。今は関係ない。
「もしもし?」
「かおりさん!安室です」
「安室さん?どうしたんですか?電話なんて珍しい」
「どうしても今渡したいものがあって」
「今?」
「はい。もう家の側まで来ているので、少し出てきてもらえませんか?」
「・・・分かりました」
家の前に車を停め、待っていると、かおりさんが出てきた。
パジャマに上着を羽織ってきただけの格好のかおりさんを、可愛い・・・と思っている場合ではない。
車の窓を開けて、急いで要件を伝える。
「組織の人間に、かおりさんの存在を怪しまれたかもしれない」
「ええ!?」
「しばらく、身の回りには十分に気をつけて」
「う、うん」
「恐ろしい女に目を付けられたかもしれない。詳しい事は赤井にでも聞け。ベルモットという女だ」
「ベルモット・・・」
「僕はこれからしばらくかおりさんとは関わらないようにする。当分エラリーのバイトも無しだ」
「え・・・っ」
「落ち着くまでこちらから連絡はしないし、してくるなよ」
「・・・わかった」
「あまりここに長居もできないから・・・今日はこれで」
「もう!?」
「おやすみ、かおりさん」
「おやすみ、なさい・・・」
車を発進させ、尾行が無いか確認しながら自宅へ帰る。
自宅に着くなり、ベッドに横になる。
ベルモットがかおりさんを手にかける場合に有り得そうな最悪のパターンを考えたり・・・
僕がベルモットだったら、どうかおりさんを利用するだろう、とか・・・
どんな手段で来られても、彼女を守れる最善の方法がないか、ひたすら考えた。