第11章 再会する彼ら
エラリーの閉店時間まであと一時間程になった頃。
客は残り一組。きっと、この後も新しい客は入ってこないだろう。
特にする事もなく、カウンターの中で零と適当な話をしていた。
波土のどの曲が好きだとか、僕はカラオケは苦手だとか、零が昔楽器をやっていた事とか。
本当はそんな話じゃなくて、組織の事やらを色々聞きたいんだけど。
まあ、客がいる手前、顔が怖くなるような話はできない訳で。
でも、突然零は切り込んできた。
「赤井も今回の話は知っているのか?」
急にボソッと耳元で言われ、心臓が跳ね。
「・・・知ってるはずだよ」
小声で答えた。
沖矢昴と赤井秀一は別人であると思わせる事にはとりあえず成功したはずだけど・・・
今でも零はたまにこうやって、わたしに秀一さんの事を聞いてくる。
いつも不意をつくようなタイミングで聞いてくるから、本当に困る。
そして再び会話の内容は世間話に戻り、最後の客も帰って、閉店だ。
零の運転で家まで送ってもらう。
彼と次に会うのは、ライブのリハーサルのときか。
「かおりさん、本当に来るのか?」
「そのつもりだけど」
「でもやっぱり僕はかおりさんを、組織の人間に会わせたくない・・・」
「大丈夫だよ・・・コナンくんも昴さんも一緒だし」
本当に、気を付けろよ、とキツく抱きしめられる。
・・・苦しい。 二本の腕で強く抱かれているからでもあるけど・・・
零の発する声が辛そうで、それに更に胸を締め付けられる。
腕から解放されると、唇が触れるだけのキスをして、わたしは車を降りた。
大きく深呼吸して、家に入った。