第11章 再会する彼ら
翌日。エラリーに出勤して。
開店準備を済ませ、早速彼に聞いてみる。
「ねえ・・・聞きたい事があるんだけど」
「安室透にですか?・・・それとも」
「零の方」
「それなら内容の予想はついてるけど・・・なんだ?」
十七年前の事件で残されたアルファベットと、例のロックミュージシャンの新曲のタイトルについて話す。それらに組織に繋がる何かはあるのか。
「やっぱりそれか。確かに羽田を殺したのは組織だけど。あの文字の真意は、組織も公安も分かってない」
「そっかー・・・」
「だから今度、波土本人に直接確かめに行くよ」
「何か分かったら教えて?まあわたしも園子ちゃんのツテでライブのリハに連れてってもらうんだけどね」
「ほんとか?・・・僕の確かめに行くっていうのも、それだ・・・」
「零も!?」
・・・秀一さんと零を会わせても大丈夫だろうか。 不安が頭を過ぎった。
「かおりさんは行かない方がいい・・・」
「なんで?行くよー」
「僕は組織の人間と一緒に行くから・・・どうしても来るのなら・・・言動には気を付けて」
「え」
「ポアロの梓さんに変装してくる女がいる。変装には気付いてないフリしろよ。それから・・・僕と必要以上に喋らないでくれ」
「・・・分かった」
「かおりさんは誰と行くんだ?」
「昴さんが波土好きみたいだから一緒に行くよ。コナンくんも行くって言ってたけど?」
「へえ、沖矢さんとコナンくんね・・・」
客が来店し始め、何も無かったかのように接客を開始する。
トリプルフェイスを知りながら一緒に働くのも、中々大変である。
一番大変なのは、本人だろうけど・・・
スーパーバイト安室透のおかげで、今日も客の注文を卒無くサクサクこなすことができ、気付けばお昼のピークは終わっていた。
相変わらず美味しい、零の作ったまかないを食べながら、スマートフォン片手に沖矢昴宛のメッセージの文面を考える。
“波土のライブのリハーサル、安室さんも行くんだって”
・・・これでいいか。
数分後返ってきたのは〝そうですか。早く会いたいですね〟だった。
秀一さんは誰に会いたいんだ?
(ちなみに昴さんが波土を好きっていうのは、口実であり嘘である)
まあ何にせよ、早く帰って組織の女の事を秀一さんに話さなくては。