第10章 彼らの秘密
「かおりさん、また可愛い顔を台無しにするつもりですか?」
「それ・・・沖矢さんに言われると一段と辛いです!」
食べたいものを一通り頼み。そういえば“沖矢昴”と二人でゆっくり過ごすのは久しぶりだなー、なんて思いながら、ビールを飲んでいた。
「かおりさん、最近お仕事はどうですか?」
「喫茶店の方?だいぶ慣れましたよー。あの金髪色黒男には今日も参りましたけど」
「何かあったんですか?」
今日以前に何かあったどころじゃ済まない程の事があったが・・・
それは言える訳がないので、なんとか全ての辻褄を合わせてみる。
「こんな事、自分で言いたくないんだけど・・・彼、わたしの事が好きだってポアロで言ってるそうで。なんかそういう設定にしてるらしいです。今日もポアロの女の子に変に気遣われて困りました・・・」
「モテる女性は大変ですね」
「え、まあ・・・それでわたし、沖矢さんと付き合ってるって言っちゃったんです。もう別に構いませんよね?」
「彼に隠す必要は、もうないでしょう。彼がこちらに危害を加えることもないでしょうし」
それを聞いて内心ホッとする。
「ですよね。あっでも、ママがそろそろ退院できるみたいなんで、そしたら二人で働くこともなくなります」
「それは僕としても安心です」
「・・・これからは必要以上に関わらないようにすべきですか?」
「まあ・・・彼は応じてくれないでしょうが、情報交換ができる状態が、本当は一番望ましいですね。組織の情報が彼には常に入ってくる訳ですから」
つかず離れずこのままでいろ、ということなんだろうか。
でも、秀一さんに確認したかったことは、これでし終えた。
こうなったら後は飲んで食べて楽しもう。
ちなみにわたしは明日も休みだ。
(探偵事務所は依頼や予約がない限り基本週休二日制なのだ)
頭の隅で気にしていた事が片付いたからか。
早いピッチでかなりの量の酒を飲み、ほろ酔いを通り越していい感じに酔いが回ってきた。
「沖矢さーん!もう一杯飲むー?」
「・・・そろそろ帰りましょうか?」
「まだ飲みたいよ・・・」
「僕は・・・久しぶりにかおりさんと空でも見ながら飲みたい気分ですけどね」
「ああ・・・それもいいかも」