第10章 彼らの秘密
今日梓さんは夕方までのシフトらしく、マスターと交代になるそう。
一度奥に引っ込んだマスターがエプロンを付けて再び出てくると、今度は梓さんが引っ込み、帰り支度をして出てきた。
もう少ししたら夕食のお客さんでまた混み出すだろうから、「わたしもそろそろ・・・」と帰る意志を伝える。
零に外まで見送られながら、梓さんと一緒に店を出ると、ちょうどコナンくんが阿笠さんの車で帰ってきた所だった。
「あれ!かおりさん!梓さんに安室さんも!」
「おかえりコナンくん!もう用は終わったの?」
「昴さんのおかげですぐ解決したよ」
「コナンくんは沖矢さんとも仲が良いんだね・・・」
零の発した言葉はどこか挑発的に聞こえた。
「そうだけど?じゃあボク、見たいテレビあるから!またね!」
階段を駆け上がり去っていったコナンくん。
・・・急いでるように見えたけど、何かあったんだろうか。
秀一さんも帰ってるだろうから、わたしも早く帰ろう。
梓さんとは家の方向は違うようなので、彼女と零に挨拶をして、少し早足で家を目指す。
途中、スマホが鳴ったので見ると、沖矢昴から着信中の画面だった。
「もしもし」
「かおりさん!どこにいるんですか」
「すみません・・・もう、近くです!すぐ帰ります」
家に着くと、(沖矢さんの姿の)秀一さんが玄関で待っており、「なんで家を空けると連絡しなかったんだ」と怒られる。
ポアロに行っていたと言えば「降谷くんと接触するのなら尚更だ」と更に怒られる。
「ごめんなさい・・・」
「もう、いい。話があるから上がれ」
リビングで今日の事件にまつわる話を聞かされる。
十七年前、当時トップ棋士だった羽田浩司が、殺害される事件が起こった。
容疑者として浅香という人物の名前はあがったが、行方は不明。
奇妙な現場状況が残された、未だ未解決のままの事件だ。
これにはおそらく組織が絡んでいたとの事。
そして今日、それと酷似した現場状況の殺人事件が都内で起きて。
組織を潰せる何かを掴めるかも、と秀一さん達は博士に同行していたのだ。
結局、今日の事件は単なる殺人事件だったのだが、十七年前の奇妙な現場状況の謎を解くヒントは得られたそうだ。