第1章 米花町2丁目21番地
帰り道、沖矢さんはなんだか不機嫌そうに見えて。
理由を聞くと、わたしと親しそうな宗介さんに少し嫉妬したんだと言う。
全力で宗介さんとの男女関係を否定すると、少し沖矢さんの表情が和らいだように見えた。
この人、無表情なんじゃなくて、表に感情が少ししか現れないだけなのかもしれない。
工藤邸に帰るとコナンくんが出迎えてくれる。
「おかえりなさい!僕も今日は夜ごはん一緒に食べてくよ!有希子おばさんが料理の手配はしたから寛いで待っててってさ!」
「ではお酒でも飲んで待ちますか」
「いいですね!そうしましょう!」
「おや、結構お好きですか?」
「好きですよー。飲まない日の方が少ないくらい」
「その様子だと、買いに行った方が良さそうですね。用意していた分だけでは足りなさそうです」
再び沖矢さんの車で近所のリカーショップへ。
「かおりさんは普段何を飲まれるんですか?」
「好きなのはビールとワインかな。何でも飲めますけどね。沖矢さんは?」
「僕も何でもいけますが、好きなのはウイスキーですね、特に最近はバーボンが」
「大人ですね」
「大人ですから。しばらくの分、まとめて買って行きましょうか」
これと、これも・・・と気付いたらお酒がカゴに山盛りになっていて。かなり重たそうなのに、涼しい顔で片手でそれを持つ沖矢さん。
東都大の院生らしいし、勉強ばっかしてたインドアタイプだと思ってたけど、意外と筋肉もしっかり付いてるのかも。
・・・つい彼の裸を想像してしまい、勝手に恥ずかしくなって俯く。わたし変態だ。
「かおりさんどうかしました?」
「いえ・・・沖矢さんって意外と力持ちですね」
「“意外と”は、余計ですね。僕はあなたを守れるくらいの体力は持ち合わせていますよ」
「失礼しました・・・スポーツしてたんですか?」
「格闘技を少々」
「うそ!」
「そんなに非力な男に見えますか?」
「いえ、そんなことは」
「僕は脱いだら凄いですよ」
「人前でそういう事言わないでください」
「ではまた二人のときに。明日からは嫌でも二人きりですからね」
工藤邸に戻ると、数人の白いコック服姿の男性がリビングでいそいそと準備をしていた。
“料理の手配はしてある”ってシェフごとデリバリーだったのか。さすが工藤家。夕食が楽しみだ。