第1章 米花町2丁目21番地
わたし達は宗介さんに、こうなった経緯を説明する。
「話は分かったが、普通男女を二人きりでひとつ屋根の下に住まわせるかね?」
「結果良かったからいいんです。沖矢さんすっごく素敵な方だし」
「女性の一人暮らしは物騒ですから、僕がいる事でかおりさんが安心して暮らせるのなら良い、と工藤夫妻からは言われています」
「成程な、葵、ちょっと来い。沖矢くんはそこでちょっと待っててくれ」
「はい」
わたしだけ奥の部屋、自宅スペースらしき場所に手を引かれ連れていかれる。
「葵、あの男、見た目によらず危険かもしれんぞ、何考えてるか読めん」
「何考えてるか分かりにくい点はわたしも同感です」
「だろ?なんで同居を許した」
「悪い人には思えないです」
「お前気を付けろよ?・・・寝る時とか」
「それってアレのことですか?」
「まあ」
「あー・・・彼となら身体の関係を持ってもいいと思ってますよ。あの人時々ものすごい色気放ってくるんですから。あれで何もできない方が辛いかもー」
「葵・・・頼むから俺をこれ以上心配させないでくれ・・・」
「またお父さん的発言ですか?」
「そうだ。俺は葵には、素敵な男性と幸せな家庭を築いてほしいんだよ」
「そういう事は、まず宗介さんが結婚してから言ってください」
「俺の事はほっとけ」
「じゃ、帰ります!」
帰り際宗介さんは、沖矢さんに言った。
「沖矢くん、葵は俺の娘みたいな奴なんだ。いろいろ手間掛かるかもしれんが、頼むな」
「はい。任せてください」
わたしは達は再び車に乗り込み、工藤邸に戻る。
その様子を宗介さんが、窓から車が見えなくなるまで凝視していたことは、知らない。