第9章 今夜の予定は?
自分の声と、零の息遣い、肌がぶつかる音・・・
それらが浴室内に反響して余計にいやらしく聞こえる。
頭がクラクラして・・・口付けすらまともにできず、唾液が端からこぼれていく。
ただ零にしがみついて、喘ぐだけ。
「あっあぁっきもちい・・・っん」
「ッ・・・かおりさんっ・・・」
身体の中で膨らんでいく何かが、破裂しそうな。
「あぁっも・・・だめっ!ぁ・・・れい、れい・・・っ」
痛いくらいキツく抱きしめられて、更に激しくなる律動。
「あっあっ・・・れいっ!あぁっ!も・・・だ、め・・・」
「・・・っかおり、さん・・・っ」
「れ、いっ、あっあぁ・・・!」
一際大きさを増した零が、ドクドクと跳ねて欲を吐き出す・・・
力が抜けて、零にもたれかかる。
優しく抱きしめてくれている、彼の心臓の音が心地良くて。
そのまま寝てしまいそうなのをなんとか持ちこたえる。
肩で呼吸をしていたのが収まると、ふらつきながら身体を流して部屋に戻った。
ひとりベッドに横になり、やっと冷静になってきた頭の中には、また秀一さんへの罪悪感が湧いてきて。
秀一さんはいつ家に帰ってくるんだろう。
もしわたしが居ないことに気付かれたら?
しかも零と一緒だなんて知られたら。
冷蔵庫の前で水をゴクゴクと飲んでいる零に聞いてみる。
「ねえ、明日何時に帰るの?」
「僕はポアロの開店からだから、それに間に合えばいいけど」
「沖矢さん・・・いつ戻ってくるか分かんないし、朝になったら帰ってもいい・・・?」
「・・・わかった」
拗ねたような、寂しがっているように聞こえる声が返ってきた。
“沖矢”と“赤井”が別人だと分からせた後も、まだわたしに構ってくるのは、わたしが秀一さんと繋がっていると思ってるからか?
もうよく分からなくて零と反対の方を向いて目を閉じた。
程なくして同じベッドに入ってきた彼に後ろから抱きしめられる。
「かおりさん?」
「ん」
「なあ、本当は、沖矢さんと付き合ってるんだろ?」
「へっ?」
「じゃないとおかしいだろ・・・いくらお兄さんみたいな人だからって、いい歳した大人がなんでコソコソ遊びに行かなきゃいけないんだ」
「それは・・・」
「そうなんだろ?」
中々上手い返答が思いつかず、黙ってしまう。