第8章 緋色のエピローグ
秀一さんが人を殺したと聞いたときは寒気がしたけど、止むを得ない状況だったのだと分かれば、いくらか気分はマシになった。
それでも、死なせない選択もできたはず・・・という彼の見解には、わたしも同感だ。
秀一さんは目付きこそ悪いけど、人を殺すような男じゃないと思う・・・
零の話は続いた。
先程のヒロという男の人も含め、彼には警察学校の同期で仲良くしていた大切な仲間がいたそうだ。
卒業し、それぞれ違う道で警察の職に就いていたのだが、なんと彼以外は、皆殉職したんだと言う。
「僕の仲間はみんな、いなくなってしまった」
「辛かった、ね」
「それは辛いさ、でも昔からそうなんだ。僕の大切な人は、いなくなる。僕がそうさせてるのかも、なんて思う位」
「零のせいじゃないって。皆さんの分まで頑張ろうよ!それに・・・ごめんね、こういう事は、言っちゃダメかもしれないけど・・・零ってスパイの最適任者だよね」
「そうなんだよなー自分でもそう思ってる。でも・・・かおりさんには、僕の正体を知られて良かったのかもしれない」
「そう?」
「こんな事話せる相手は他に誰もいないから・・・今日はありがとう、付き合ってくれて。宗介さんの話もしないとな」
「はい、お願いします・・・」
「結論から言うと、宗介さんはおそらく生きてる」
「ほんと!よかったー・・・」
「あんな組織だけどその中にもごく一部、まともな人間もいるらしくてね。殺せと命じられても殺したくない場合、その人物を隠して保護している場所があるらしい」
「そこにいるの・・・?」
「ほぼ間違いなく。この事務所やかおりさんが無事である時点でそうかもしれないなと思ってはいたけど、変に期待させてもいけないと思って、言わなかった」
「会えるかな・・・?」
「今はまだ・・・調べてるけど、僕もまだその場所すら掴めてない」
「そうかー・・・でも、よかった。教えてくれてありがとう」
「やっと笑ってくれたな・・・」
「え・・・?」
「二階に上がってきてからかおりさんが初めて笑ったって言ってるんだ・・・あなたにはいつも笑っていてほしいよ」
「そう・・・?」
「もう少し一緒に居たいところだけど・・・組織の人間と約束あるから行かなきゃなんだよな・・・かおりさんも、もう帰るだろ?家まで送る」