第8章 緋色のエピローグ
零に車で家の前まで送ってもらう。
帰り際、腕を回されて、抱き締められて、キスをして。
「それじゃあかおりさん、また明日ですね」
そう、明日も二人でエラリーを開けるのだ。
「はい・・・」
「そんな目で見ないでください。帰したくなくなります」
口調と態度から察するに、どうやら今彼は安室透になっているようだ。ややこしい。
再び唇を合わせて、車を降り、彼の車が見えなくなるまで見送った。
車を降りる前、ふと、まだ帰りたくないと思ってしまった。
安室透の正体が分かった今、もう彼と男女の関係である必要はない。
でも、もしまた彼に誘われたら・・・きっと断れない。
わたしは、ほんっとに最低だ・・・
家では秀一さんが待ってる。
頭を切り替えて家に入った。
食事を用意してくれていただけじゃなく、遅くなったのにわたしが帰るまで食べないで待っていてくれていた秀一さんに、罪悪感が込み上げてくる。
「降谷くんはどうだった」
「二人になった時に、降谷零として、接してきましたよ。わたしと秀一さん、コナンくん、FBIは仲間関係にあると思われてますね」
「ほう」
「わたしたちと協力するつもりは無いけど邪魔する気も無いって。秀一さんが生きてたことも組織には報告してないそうです」
「ボウヤの読み通りだな」
「そうなんです。ほんとコナンくんって凄すぎ。それから、宗介さんはおそらく生きていると言われました」
「よかったじゃないか。どこにいるんだ?」
「秀一さんは知りませんか?組織の中にもまともな人がいて、殺せと命令されたその対象の人を匿ってる所があるらしいんです・・・」
「初耳だな」
「そっか・・・彼も場所までは知らないみたいで」
「そこを見つけるのが先か、組織を壊滅させるのが先か・・・」
「頑張らないといけませんね!」
「ああ、そうだな。ところでなかおり・・・ちょっと見てくれ」
タブレットを操作する秀一さん。
「なに・・・?あっ!今日か!おめでとうございます!」
「凄いだろ?自分の事のように嬉しいっていうのは、こういう気分なんだな」
秀一さんの弟、羽田秀𠮷こと太閤名人がついに七冠王になったとの記事を見せてきたのだ。
喜んでる秀一さんが・・・可愛い。
わたしはやっぱりこの人が好きだ。