第8章 緋色のエピローグ
「ある時、スコッチはスパイじゃないかと組織内で噂が流れたんだ。疑わしきは罰する集団だからね、すぐにスコッチを殺すよう司令が出た。それを受けたのがライ、赤井だったんだ」
「そういうこと・・・」
「僕はそれを聞いて直ぐに、二人の居る所へ駆けつけた。でも遅かったんだ・・・銃声が聞こえて、僕が到着した頃にはヒロは心臓を撃ち抜いて死んでいた。赤井程の男なら、ヒロを殺したように見せかけて逃がすことだって出来たはずなのに」
彼は歯を食いしばり、拳を強く握り締めている。腕が震えている。顔なんてもう、別人のようで。
なるほど、彼の秀一さんに対しての恨みはかなり大きいようだ。
「安室さん、落ち着」
「僕は安室じゃないと言ってるだろ!」
大声で叫ばれて、一瞬身体が強ばる。正直、彼を怖いと感じた。
でも次の瞬間、わたしは自然と彼に近付き・・・彼の震える手を両手で握っていた。
「ごめんなさい、零の気持ち、分かったから。落ち着いて・・・」
そう言い切ったかという所で腕を強く引っ張られ、身体ごと彼の腕の中に収められた。
めちゃくちゃな体勢で、無理矢理抱き締められる。
「ねえ・・・苦しい・・・離して」
「嫌だ・・・離したくない」
逃れようとしても更に彼の腕の力が強くなるばかりで。
「ちょっと・・・」
「キスしてくれたら離す」
・・・至近距離で、恐ろしい位整った顔が、唇を少しだけ突き出してこちらを見つめてくる。
この顔面は、反則だ。
彼の切ない眼差しに、胸が締め付けられる・・・
「早く・・・」
拒もうと思えばできたはずなのに・・・
唇を合わせてしまった。
チュ・・・と小さく音を立てて離れると、身体が持ち上げられて彼の横に座らされる。
体勢はかなり楽になったものの、再び唇を塞がれて、今度は背もたれと彼に挟まれ、身動きが取れなくなる。
でも、唇の感触が、心地良い・・・ずっと触れていたいと、思ってしまう。
次第に抵抗する力も抜けて、キスに没頭する。
わたしは何をしているんだろう・・・
ひとしきりお互いの唇を堪能すると、彼はわたしから離れて言った。
「ごめん・・・何してるんだ僕は・・・」
「・・・もういいから・・・続き、聞かせて?」
「そうだな・・・」