第1章 こども
「ヨシくん、それ私の笛じゃない?」
そうだよ、有ちゃんの笛だよ。
でもボクは何も言えなかった。
「ヨシくん、私の笛ふいてたの?」
そうだよ。
「なんで?」
だって。
「私のことが好きだから?」
え、あ…。
う、うん。
そうだけど。
さっきから心臓がバクバク言ってたけど、もっと大きくバクバク言い出した。このままこわれちゃうかもしれない。
あ、ナミダ出てきた。
ヤバい、かっこわるい。
「そうなんだ…」
有ちゃんはツトツトと歩いてきて、ボクの手から笛をうばった。
「ヨシくん、私のこと好きなんだ」
ボクはもう死んでしまいそうになって、ナミダも鼻水も出てくるし、だまってるしかなかった。
もうダメだ。有ちゃんにきらわれた。サイテーだなって思われた。
有ちゃんは先生に言いつけるだろう。お父さんやお母さんにも言うだろう。友達にも言うだろう。
ボクはおしまいだ。
有ちゃんはしばらくだまっていたけど、やがてこう言った。
「ねえ…ナイショにしてあげようか、このこと」
「え゛っ゛」
ズビ、と鼻水をすすりながら、ボクは思わず顔を上げて有ちゃんを見た。
「ヨシくん、バラされたらイヤだよね?」
「あ゛…うん゛…」
だまっててくれるの?
ほんと?
すごい、すごいすごいすごい。やっぱり有ちゃんって優しい。女神様だ!
「ナイショにしてあげる。でもその代り、私の言うこと聞いてくれる?」
「う、う゛ん。うん!聞く、な゛んでも聞く!」
ボクはこわれた人形みたいに首をタテにふりまくった。
バラさないでくれるならなんだってするに決まってる!
ていうか有ちゃんのこと好きだから、なんだってする!
でも、何を言われるんだろう?
ボクがドギマギしていると、有ちゃんはボクに近寄ってきて、どんどん近寄ってきて、え、近すぎじゃない?と思ったら、ボクのちんちんをズボンの上からガシッとつかんだ。
「ヨシくんて、しゃせいしたことある?」