第1章 こども
ボクは笛ぶくろのボタンをプチっと外して、笛を取り出した。
白くてきれいな笛だった。
ボクのと同じ笛のはずだけど、有ちゃんの笛だからすごく特別に見えた。
ボクは今日まで家で一生けん命考えてきたんだけど、ペロペロなめるのって変態みたいで気持ち悪いから、笛をなめるんじゃなくて、ふくことにしようと思う。
有ちゃんと同じ笛をふくって、なんかカッコいい気がする。
だれかに見られても、「笛の練習してたんだ」って言えばいいし。
それでいこう。
さあ…ふくぞ。
本当にふいちゃうぞ。
ボクは本気だ。
やるったらやるんだ。
やれ。
やれってば。
パクッ
ボクはついにやった。
有ちゃんの笛をくわえた。
有ちゃんの笛をくわえた!
ちょっとツバくさい気もしたけど、有ちゃんのだから全然平気だ。
どっちかっていうと、興奮した。
なんかおまたがムズムズした。
よし、ふこう。
ボクがガクフ見ないでふけるのって『かっこう』くらいだけど。
その時ガラピシと音がして教室のドアのところから「何してるの」って声がした。
「ヒエッ…!」
ボクはびっくりして、有ちゃんの笛を放り投げた。
ガンガラランっていいながら笛は転がった。
ボクはふり向いて、声の方を見た。
「何してるの、ヨシくん」
「あ……有ちゃん…」