第2章 おとな
「私ね、大人になりたかっただけなの…」
「うん?」
「大人になりたくて、背伸びして、いいカッコしてただけなんだあ」
「ああ…そういう時期って、誰にでもあるよね。ボクもあったよ」
思春期の子どもにはありがちなことじゃないかな?特に気にせず、ボクはビールをすすった。
有ちゃんはそのまま話を続けた。
「私、隣の家のお兄さんに恋してたの。大学生のお兄さん」
……。
あ、そうなんだ。
うんまあ、そういうことも、よくあるよね。
「本気で好きだったの。お兄さんの恋人になりたかった。でもお兄さんは私をそんな風には見てくれなかった。当然だよね。小学生だよ?ガキすぎるよね」
「あ…うん、そうだね。まあね」
「だから大人になりたかったの。どうしたらいいか一生懸命考えて…それで思ったの。エッチを覚えればいいんだって」
「ぐほっ」
口にしたビールを思わず吹き出しかけた。
「ネットとか使って、色んなことを覚えたよ。でもやっぱりさあ、実際にやってみないと、わからないじゃない?」
「う、うん…まあ、そうかもね…」
ハンカチで口を拭いながら、ボクは相槌をうった。
「…だから、ヨシくんを使って練習したの」
瞬間、ボクの脳に色々な記憶が蘇った。
──私、気持ちよくしてあげたいから、どうやったら気持ちいいかちゃんと教えて
──気持ちよかったんだよね?気持ちいいから、しゃせいしたんだよね?
そうか。
あれは、あれは全て、そうだったんだ…。