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今日、君の笛をふきます

第2章 おとな



「わあ〜、ヨシくん本当に久しぶりだね。中学校は別だったから、小学校以来だもんね。すぐわかってよかったあ」

右手にビールグラスを掲げた有ちゃんは、コロコロと楽しそうに笑っていた。
ああ、変わらないな。
昔からそうだ、笑顔の可愛い人だった。
ボクは有ちゃんが好きだった。

「ひ、久しぶりだよね。君も変わってないみたいで、よかった。えと…桃浜さん」

さすがに有ちゃんと呼ぶのは憚られたので名字で呼んでみたけど、有ちゃんは
「やだあ〜、昔のままでいいよ!有ちゃんって!もう桃浜でもないしね〜」
と笑った。

あれ、有ちゃん、結婚…してるんだ。
いや、年齢的には全然おかしくないんだけれど。

「結婚してたんだ。悪かったね。指輪してなかったから、つい」

そう、彼女の左手薬指には指輪がなかったのだ。

「結婚したら指輪してないとダメ?」
「いやいや!そんなことないよ。仕事とかで指輪つけられない人もいるし、最近は指輪買わない人も多いからね…」
「そういうヨシくんは、指輪してるんだね」

有ちゃんはボクの左手を見て、クスッと笑った。
ボクの左手薬指には、シルバーの結婚指輪がキラリと光っていた。

「いいなあ、奥さんを大事にしてるって感じがする。ヨシくんって昔から優しかったもんね」
「有ちゃん…も、優しかったよ。みんなからハブられてるボクと、仲よくしてくれたし」
「ふふ、そうだったっけ」
「そうだよ。ボクのテストの答案を、みんながふざけて壁に貼り出したの覚えてる?そういうことはよくないって、みんなに言ってくれたよね。あれがすごく嬉しくてさ…。有ちゃんはいつも毅然としていたよね」
「うふふ…」

有ちゃんは懐かしそうに目を細めた。
でもその顔は、どこか寂しそうにも見えた。
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