第2章 おとな
「久しぶりー」
「あー懐かしいー!」
「お前変わってないよな」
「えっこの辺に住んでるんだー?」
同窓会が無事開会し、そこかしこで話が盛り上がっている。
立食形式のパーティー。ボクは少し壁際で、ビールグラスを持ちながら、ひとりポツンと立っていた。
生来シャイな性格で、それはこの歳になっても変わらない。
グズでのろまでぶきっちょだったボクは、仲のいい友達もあまりいなかったし。
と、そんなボクに近づいてくる人がいた。
「あれ、もしかしてヨシ!?」
「えっ、あっ」
「うわー、すぐわかったよ、なっつかしいなーおい!」
「あ、ああ」
「え?もしかしてオレのこと忘れてる?わかんない?」
「いや、そんなことないよ」
「ハハハ!お前昔っからそうだよなー!ん?あれってもしかしてアキラか!?おーいアキラー!じゃあヨシ、また後でな!」
ふう。
忘れてないってば。彼は、ボクが掃除当番でゴミ箱を運んでる時に、よく体当たりで転ばしてきたやつだ。
ホースで水をかけられたこともあったっけ…。
なんだか、暗い記憶ばかり思い出しそうだ。
正直、同窓会はちょっと気が進まなかったんだよね。小学校の頃はよくいじめられたから。
でもどうしても来たかった。だってホラ、彼女に会えるかもと思ったからだよ。
「ヨシくん」
そう、こんな感じで彼女がボクに声をかけてくれるかもと思ったから…ん?
「ヨシくん、だよね?」
「えっ、あ…」
ボクは大マヌケに口を開けてしまった。
ボクの目の前にいる女性、彼女は、彼女は…
「有、ちゃん…」
有ちゃん。
そうだ、有ちゃん。
有ちゃんだ。