第1章 雄英高校入学試験
‐SIDE死柄木‐
拠点としているバーに向かいながら自分の右手を見て、冷たくも繊細な感触を思い出す
五指をつけなくても触ったら消えるのかと思った。
いや、少し違う。例えるなら…そう。
「水だな。」
確かにそこにあるのに、力ずくで掴もうとすると手の中から消えていく。
ゆっくり、慎重に、大事に掬わないといけない。
あのとき、自分は確かに比較的イライラしていた。その自覚があるくらいには。
それでも隣に居て、その存在や表情や声があっただけでいつも通りになっていた。
そこにいるのが当たり前みたいな感覚だった。
ほら、やっぱり水じゃないか。
変な詮索をする訳でもなく、存在を否定する訳でもなかった。
ただ隣に居ただけ。
最後に彼女に触れたとき、その手首の細さに驚いた。
けど、その倍くらい驚いた顔をして振り返った。
そういえば、一度も恐れるような表情はしなかったな。
頬に触れたとき、五指が触れないよう細心の注意を払った。
カサカサの手に潤いを与えられたようだった。
髪は一本一本が細くて柔らかい。
なんだこれ、中毒みたいだ。
もう一度会いたくて、またねと言ったが実際は本当に会えるか分からない。
待っててね零。全てが終わったとき、会いに行くから。