第4章 一寸混ざった、世界のお話
翌朝ーーー
中也は朝食の準備をしながら昨晩の事を思い出していた。
『君が私の姿を見て浮かべた、嫌いな人に会いたいのだよね』
酒の飲みすぎで飛んでることもある記憶は、今回は全くといって良いほど保たれている。
次に、夢だと思いたかったが、思うことは起床してすぐに断念せざるを得なかった。
ソファで寝ていた理由を探るべく寝室に向かったところ、居たのだ。
初めてのベッドに感動しながらそのまま寝落ちてしまった狐がーーー。
「……どうすッかな」
「何がだい?」
「うぉっ!?」
朝食を並べていた中也の背後に、音もなく現れた気配に声を掛けられて中也は驚きの声をあげる。
その様子にコロコロと笑う狐。
「いきなり声かけんな、驚くだろーが!」
「そう?勿論態とだとも!」
「本っ当に手前はーー………あ?」
「?」
俺は今、何を云おうとしたーーー?
『相変わらず』って思わなかったか……?
そう思ったのは、姿が元相棒に似ているせいか、或いは………。
「ちゅーや??」
「!」
名前を呼ばれてハッとした中也は、考えることを一旦止めた。
「顔洗ってこい。そんで飯にすンぞ」
「はぁい」
美味しそうだなー、と机に並べられた和食を見て嬉しそうに笑うと狐は云われた通りに顔を洗いに行ったのだった。
ーーー
「ふぅん?敵対組織ねえ」
「今は停戦協定中だから争うわけにはいかねえ」
「それと彼に会えない事に理由はあるのかい??」
「……話聞いてたか?敵なんだよ、敵!」
「でも元相棒なんだろう??」
「そもそも敵じゃなかったとして、彼奴が俺の云うことを素直に聞き入れる訳ねェンだよ」
「…え?」
その言葉にキョトンとする狐。
漸く、会話のキャッチボールが一旦止まり、中也も一息着く。
狐は少し考える。
「仲が本当に悪いのかい?」
「だからそう云ってるだろーが!」
「………。」
ここまで断言されることは想定外だったのだろう。
狐はブツブツと考え込む。
「矢張り、してやられた、か」
「あ?何だって?」
「否、何でもないよ。此方の事だから」
狐はニコッと笑う。が、目は笑っていなかったのを中也は見逃さなかった。
何かあるんだろうな、とは思うがそれ以上は聞かなかった。