第1章 崩壊
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エレンは殴り掛かろうとしていた手を降ろし、舌打ちをしながら私の腕を掴むと、早歩きで食堂を出て行こうとした。
「お、おいっ!そ、その、名前は何て言うんだ…?」
赤面した男の子が私に問う。
「…私?ななですけど…」
「いちいち答えんじゃねーよ…」
溜息をしながらエレンは頭を抱えているようだった。
「そ、そうか!そ、その、綺麗な髪だなと思って…」
「あ、ありがとうございます?」
そう答えるとすぐにエレンに引っ張られ、食堂の外に連れ出さた。
すると両腕をエレンに取られ、すぐ側の壁を背に追い詰められる。
「ど、どうしたのエレンッ…?」
「……。お前露出し過ぎなんだよっ…。」
沿っぽを向きながら赤面したエレンの両手の力が強まってくる。
「え?そんな事無いよ!スカートだけど膝までだし。ミカサだって履いてるじゃん。」
ミカサよりは短いが、そこまで変わらない上に、同じスカートだ。私だけに怒る理由が見つからない。
「あぁもう…そうかよ…。トレー片しといてやるからお前先に宿舎に戻ってろ。」
「…?分かったよー、じゃあ手ぇ離して?」
こういう状況は何度かあった為、意味も分からず何度かその場で適当に返事をし、エレンから離れていた。
その顔やその態度をミカサにしないのはずっと前から不思議だと思っていたが、問う事は無かった。
エレンに言われた通り宿舎に向かう。近くで見ていたミカサも後ろから小走りで付いて来てくれた。
「もー、いっつもいっつも何なんだろうね?エレンが一番心配性なんだから…。」
溜息を付きながら宿舎に向かう途中、ミカサに愚痴る。
「…。私もななが心配だ。ずっと近くで見ていたから。ななは鈍感だ。もう少し気を付けた方がいい。」
「はいはい!じゃあ今日一緒に寝てね!まだ慣れてないし怖いから。」
「…分かった。」
ミカサは納得していない様な顔で頷く。
ミカサは私達以外の人とあまり馴れ合わない。たまに見せてくれる言動は私達からしても貴重だったりする。
今日はよく喋る方だ。
大部屋に辿り着いた私達は荷物を整理し、浴槽に向かった。お風呂に入り終わり部屋に戻ると、入団式の疲れからか、急激に眠気が襲って来た。
「ミカサおやすみ…」
ミカサに抱き着き、落ち着いた私はすぐに眠りについた。