第3章 調査兵入団前夜の事件
自室に向かう途中、私は前方から来た男に声を掛けられた。よく見ると同期だ。名前は知らないが、対人格闘術の時に何度か組んだ事がある。
「そ、その、話があるんだ…。」
「…?良いよ?どうしたの?」
大事な話があるから一緒に倉庫に来てくれと頼まれた私は同期の後に着いて行った。
もしかしたら所属兵団を迷っているのかもしれない。
駐屯兵団に行くと言っていた彼だが、この大変な状況を見て調査兵団に入ると覚悟を決めてくれたのかもしれない。
そう期待しながら先に倉庫に入り見渡すと、そこにも顔見知り程度の2人の同期が胡座をかき、瓶に入った酒をゴクゴクと飲んでいた。
「よう、遅かったなぁ。」
そう言いながら瓶を置き、立ち上がる2人。
不思議に思い後ろを見ると、先程話があると言っていた男が倉庫の扉を閉めながら申し訳なさそうに出て行っている。
「へへっ…見張り番頼むぞ!」
さすがの私もこの状況を危ういと察し、先程閉められた倉庫の扉を叩く。
「ちょっと!何してんの!開けてよ!!」
「なな、大声出しても無駄だぜ?
仲間の死体見て凹んでる奴らか、俺等みたいに気ぃ紛らす為に性欲処理してる奴らしかいねぇだろうからよ。」
汚い笑い声が倉庫に響く。
近寄ってくる2人の男に足が竦んでしまう。
「言っとくけど、アンタらが私に勝てると思ってるの…?」
竦む自分に悟られない様に言葉で抵抗する。
「確かに…俺ら2人でお前に挑んでも負けるだろうなぁ…。」
喋っている男が肩を落として凹んでいる様子だ。
言葉で脅したのが効いたと思い安堵する。
「でもそれはお前が女じゃねぇ場合だ…。この状況で足が竦まねえ女は居ねえからなっ!!」
ッッ!!
その瞬間、構えていた手首を両手で押さえ付けられ、勢い良く扉に私の背がぶつかった。
もう一人が私の口を塞ごうと布を挟んでくる。
「ンーッ!!」
「ハハッ!どうしたなな?!勝てるんじゃ無かったのか?!」
気持ち悪く笑う男に両手を抑えられ、もう1人の男にスカートを捲り上げられる。
「見ろよこの白い肌…。お前ホントに訓練して来た身体かよっ…。」
いやらしく太股を触られ、気持ち悪い感覚が私を襲った。