第2章 飲みに付き合え
「私には親がいません」
彼女の口から放たれた言葉に口が開いたまま塞がらなくなる。それでも彼女は続けた。
「物心ついた頃からいないんです。親の顔を見たことがありません。なぜなら私の親は亡くなってしまいましたからね」
彼女は平然と昔のことを言う。
「父は私が生まれたことを知って職場から急いで病院に向かっていたところを車にはねられました。母は元々身体が弱かったので私を産んでからすぐに亡くなりました」
2人しか客がいないBARに彼女の声だけか響く。
「周りからはお前なんて生まれて来なければよかったと言われたらしいです。私は覚えていませんがね」
ははっと笑った彼女の顔がどこか悲しみに溢れていてた。