第3章 【黄瀬】夢の夢
「雨宿りできるとこないよー!」
「あーもう!いいっす!俺んち行きましょう!」
「いやいいよ!嫌なんでしょ!」
屋根も木陰も近くには見当たらず立ち尽くす。
全身ずぶ濡れになりながら私達は何度か押し問答をした。お互い雨音で声が聞こえなくて大声になっている。
黄瀬くんはそのやり取りにむしゃくしゃしたみたいで髪をわしわしと掻き回した。そして、突然、私の手を掴んだ。
「大事にしたいんすよ!だから、我慢出来る自信ないから家に呼びたくなかったけど!風邪ひかれる方がもっと嫌だから!」
黄瀬くんの真剣で余裕のない表情に思わずどきりとして、私はそれ以上言い返すことが出来なかった。
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