第3章 子守唄
その日の夜、みんなが寝静まった頃、鶴丸は1人縁側に座っていた。
鶴丸「…今日は…君の好きだった満月だ…」
大きく淡く輝く満月を見つめながら、先代の主を思い浮かべる。
鶴丸「…君が今の俺を見たら…なんて言うかな…」
日本酒を口に運び、独り言を呟く。
そんな鶴丸に、聞き慣れた声が降ってくる。
?「あなたらしくないわね、鶴丸」
鶴丸「!?」
鶴丸は面食らったように周りをキョロキョロとするが、誰もいない。
なおも、声は聴こえる。
?「あら、声が聴こえるのね」
鶴丸「…雪華…?」
せっか。鶴丸はかつての主…否、愛しい人の名前を呼ぶ。
応えるように、声は降り注ぐ。
雪華「ふふ、そうよ。あなたがあんまりにも悩んでるみたいだからね、一時的に話が出来るようにしてもらったの」
鶴丸「っ、雪華…」
雪華「…ねぇ、鶴丸。私との約束、覚えてる?」
鶴丸は頷き、絞り出すような声で答える。
鶴丸「忘れるものかっ…」
雪華「…あの子…新しい主ちゃんとは、順調?」
ユキの話が出ると、鶴丸は俯いてしまう。
鶴丸「…わからない…」
雪華「でも毎日楽しそうだったわ」