第1章 first summer
「あう…どうにもだめなんだぁ、僕。折角リリーが気を使って励ましてくれてるのに…」
ゆっくりと羽を動かしている肩にとまった蝶。
そっと指を差し出し移動させつつ大きなため息をついたのは、体育座りをした小さな女の子。
場所は人目につかない植物育成用の温室。
いつの間にか頭の上にも新たな蝶が止まっていた。
「…ねぇ、。何度も言うようだけど、いい加減人間以外の生き物に話しかけるのやめたらどうだい?ボクはもう慣れたけど、正直怪しいよ。ってかキモい」
ぶわっ
「リ、リドルは黙っててよ!!てかそっちこそ僕にずーっとついてきて、きっ…きききキモいよ!!」
一気に飛び出た涙は重力抗えずそのまま地面に落ちる。
わーっと騒いだ拍子に、優雅に指にとまっていた蝶は頭に移動した。
「ハイハイ。いい子なちゃんは『キモい』とか普段使わないもんねー。よく言えたねー。偉いエライ。褒めてあげるからその滝みたいな涙ふきなー。泣きはらした顔じゃ、また恥ずかしくて他の人としゃべれないよ?」
「っぐ。えぐっ…ゔ~~~…リドルの意地悪…」
2匹の蝶がとまった頭のまま、取り出したハンカチを瞳の下の方に当てて応急処置。
リドルと呼ばれたその少年はワザとらしくため息をついてから、ふわふわとの正面に移動する。
「ボクだって四六時中君みたいな泣き虫と一緒にいたくないよ。でもしょーがなくない?…ソレ、とれないんでしょ?」
リドルが『ソレ』と指さしたのは、の左手の中指にハマっている指輪。
アンティークなのか少し年季を感じさせるものの、銀の繊細な細工と真ん中にはめられた小さめの赤褐色の石がとても綺麗だった。
「…そ、れは…まぁ、とれないけどっ」
「なんでだろーねー。まぁ、落ちてたもん拾ってつけてみちゃうが悪いんだよ。ボク、それから離れられないみたいだし?なんてーの?指輪の精みたいな?わー、なにそれマジウケるんですけどー☆超メルヘンチックー☆」(←棒読み)
「もう!からかわないでよ!第一、指輪の精なら自分でな、何とかしてよっ」
「できるならとーっくにしてるし」プイッ
「『プイッ』じゃなーい!!リドルは他の人に見えないんだよ?みんなは僕が独り言いってるように見えちゃうから変な目で見られるんだよ~~~」