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青一点【BSR】

第1章 選抜試験


目が覚めた。見慣れない天井が目に入る。兵舎の天井だ。
俺は、また新しい一日を迎える。
そして今日はこれまで生きてきた16年で、最も重要な日となる。

伊達軍に入るための、選抜が行われる。


――― 青一点 ―――

 【白池雄司】。貧しい農民の出であり、16で伊達軍に入隊する。理由は親の難病により、稼ぎが無かった上に薬代が必要だったため。華奢であったが、身体の小ささと素早い身のこなしを生かし、参加者中最年少でありながら合格を果たす。女であったという記述が残されているが、後の武勲からは女では達成できないと考えられる点が多く、事実なのかどうかは定かではない。(「【白池雄司】の生涯」より抜粋)

 事前に申し込んでおいたのを書状で呼び出され、最小限の荷物を持って昨晩登城し、兵舎に泊めてもらって今に至る。そして今日、領主伊達政宗直々に選抜を行うというわけだ。
「失礼いたします」
 ぼぅっとしているうちに、女中がやって来たらしい。「お召し物と朝食をお持ちしました、お手伝いいたします」
「いや、構いませぬ。置いておいて欲しい。自分で着替えますので」
「そうですか。…しばらくされたら片倉様が今日の説明に参ります。それまでにお召しかえを済ませておいてください。では…」
 ぱたぱたと、軽い足音が遠ざかる。一人一人にかけていられる時間は少ないのだろう、とても忙しそうだ。
 襖を開け、着替えと朝食を持つ。その布地にはやはり、伊達軍の色である鮮烈な青が目立つ。これを着てあの名高い奥州筆頭の眼前に立てるのだと思うと気分が高揚する。武者震いもしてくるようだ。
 …さて、早く着替えねば。もたもたしていると、竜の右目が来てしまう。上司の手前で着替えなど減点になりかねない無礼だ。
 襖を閉め、夜着を脱ぎ始める。
 そしてすぐに、余計な物が目に入る。男にしては膨らみすぎた、胸だ。
 そう、雄司は本来女である。雄司は勿論偽名であり、本名は輝月と言う。
 なぜ女でありながら軍役に服する必要があるのか?
 それは両親を養う金の為。給料のいい伊達軍に入れれば、薬も楽に買えるだろう。この男っぽい性格と女にしては低めの声、短い髪。誰が女だと見抜けようか。力の差など、稽古でなんとかしてみせる。足の病気の父さんと、身体の弱い母さんの為ならば。
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