第1章 朝帰り
「俺が夢中になるくらいの女になってみろ。」
当時付き合っていた彼氏に振られた私を励ましてくれた敬浩。
泣きじゃくる私を優しく抱きしめてくれた。
いつの間にか彼に本気になっていたわたし。
でも、彼がわたしを見てくれる日はいつまでも来なかった。
「敬浩~。朝だよ。」
「んー。何時?」
「7時。」
「おわっ!やべえ。今日、早かったんだ。打ち合わせだった。」
慌ててシャワーを浴びる彼。
「今日は夜ご飯どうする??」
「んー。いらない。約束あるから。」
朝ごはんを急いで口に運ぶ。
「ぶー。誰と?」私は嫉妬から少し不機嫌にきく。
「美冬さん。」
「…。う…。聞きたくなかった。」
「お前が聞くのが悪い。」
「だって、気になるんだもん。」
美冬さんてのは、私のライバル。っていっても私が勝手に敵視してるだけだけど。敬浩は美冬さんにずっと片思いしている。
それでもそばに居たかった私は、敬浩のお家にこうして入り浸っている。
今では、合鍵まで渡されている。まあ、敬浩にとっては家の事をしてくれるから助かっている訳で、深い意味は決してない。
『それでもいつか私だけを見てくれる日がくるかな。』
「おい。名無し。聞いてる?」
「え?あ、ごめん。なに?」
「また、くだらない事考えてるんだろー。明日、お前もパーティ来るんだろ?」
「うん。」くだらなくなんてないもん。
「俺、仕事場から直接行くから、がんちゃん達と一緒に行って。」
「えー。残念。一緒に腕組んでいきたかったなあ。」笑いながら敬浩の腕に手を組む。
「お前、がんちゃん悲しむぞー。エスコートしなくちゃって張り切ってんのに。」
「そうなの?かわいいなぁ。笑」
「それはそうと、ほら、ドレス。これ着てみ。」
「?」
高級ブランドの紙袋を開けると素晴らしい装飾がされネイビーカラーの素敵なロングドレスが入っていた。靴も。一式入っている。
「え?!」
「ほら、いつも家の事してくれんだろ。お礼。気に入らなかったら代えてもらえるけど。。。」
「ううん!すっごくうれしい!わーーーい!ありがとう!」
満面の笑顔で敬浩に抱きつく。
「敬浩、だいすき!」
「おわっ。痛い痛い。」
上機嫌な私は、明日が待ち遠しかった。