第1章 抱かない客
今夜は、真選組の隊士が数人で遊びに来たと、ヤリテが告げた。
吉原で遊ぶ隊士には、大きく分けて3つあると思う。
1つは自らの意思で来る者。これは部下や後輩を引き連れて来る事も多く、見栄なのか金払いも良いので、店にしては上客だ。
2つ目は、自分の金では来ないが、奢りならと喜んで来る者。これは新入りの隊士に多い。可愛げがあるとも言えるが、少々ガッつくタイプもいる。
そして3つ目、これは付き合いで仕方なく来ている者。遊女を見下すフシがあり、そのせいか、こちらへの扱いが多少ぞんざいなので苦手だ。
さて、今日はどのタイプか。
「ようこそ、おいでくんなまし」
決まり文句で挨拶をし、顔を上げた私は、心の中でため息をついた。
目の前の客は、3つ目だ。眼鏡の奥の眼がひどく冷たい。
それが、私と真選組参謀、伊東鴨太郎との出会いだった。