第2章 第一章失踪と置手紙
スーツケースを引きずりながら行く当てもない私はとりあえず公園に向かった。
とにかく一晩ここで過ごそうと思ったら。
「どうしよう!もう無理だ」
何故か先約がいた。
私よりも不幸を背負いながらズドーンと暗くなっている長身のお兄さん。
「グスン…」
「あの、これどうぞ」
「え?」
思わずハンカチを差し出してしまった。
「ありがとうございます」
これまたすごいイケメンさんだ。
身内にイケメンがいたのでイケメン体制はついているけど、別格だった。
(それにしてもいい体…)
モデルのような体系だった。
「お兄さん、どうして泣いているんですか」
「すいません。恥ずかしい」
「これも何かの縁です。話だけなら聞きますよ」
「うっ…はい」
眉を下げるお兄さんは見れば見る程イケメンさんだったけど、外見とは反対にとても繊細な人だった。
お兄さんの話曰く、お父さんが漁師だったが怪我で多額の借金を背負うことになってしまった。
下にはまだ幼い弟がおり、代わりに上京して出稼ぎに行こうとしたある日、とある芸能事務所からスカウトを受けたらしい。
しかし本人は乗り気ではない。
何でもアイドルのユニットを組むように言われ、しかも方言を使うなと厳しく言われてしまったとか。
周りには自分の人格と違うイメージを持たれてホームシックになるも家族を心配させられず言えなかった。
「もう…どうしていいか」
「お兄さん、なんて立派なの!」
私は聞けば聞く程涙が流れた。
慣れない都会で苦労し、家族にすら愚痴を零すこともないなんて。
「立派…俺が?」
「だって家族の為に頑張っているんですよね?立派です…なんて素敵なの!」
成人して間もないのになんて自立しているの。
私はこれ以上無い程感動した。
「弟さんは自慢のお兄ちゃんですね!」
「そっ…そうかな?そうだと嬉しいな」
少しだけ笑った笑顔はとても爽やかだった。
「王子様だ」
「へ?」
微笑みの王子様にぴったりだと思った。