第1章 純潔
ターゲットを始末し終えた後、相棒と合流するべく地下にあった部屋から出て地上へと向かった。
大して大きくもないビルの地下で、たった今俺が始末した悪党の死体が見つかるには、どれくらいかかるだろうか。
…ま、掃除のばばあとかが見つけるんだろうな。
こんな場所だし、優秀な相棒がついてるから俺がやった証拠も全く出てこないだろう。
だってそれが俺達の、大事な仕事だから。
地上へ出ると、車と人が猛烈に行き交う騒音が俺を包んだ。
派手な灯りが暗闇を妖しく照らし、夜遊びをする男女がそこら中に蔓延る。
「あーあ、俺もそろそろ女と遊びてぇっつの」
『…あんたにそんな暇、あんですかねぇ?』
闇雲に吐いた愚痴を、目敏く聞き、反応してくる奴はもうあいつしかいないだろ。
「…んだよ、お前はいつもいつも嫌味な奴だな、カズ」
和「けっ、それもこれもあんたを信頼してる証っすよ…潤」
こんな嫌味な奴が、優秀な俺の相棒。
二宮和也。
決してお互い口にはしないが、心からお互いの事を認め合ってる。
俺達には言わなくたって分かることが沢山あるから。
飾った言葉やキザな行動なんて要らない。
お互いがお互いを信じて仕事をしている。
だからここまで上手くやれるんだろう。
和「じゃ、飯でも行きますかねぇ…もちろん、あんたの奢りで」
「お前はそれ目当てだろうが」
和「あれ、バレちまいましたか」
「まあいい、とことん付き合えよ?」
和「あいよ」
いつも通りの軽い口喧嘩をしながら、俺とカズは夜の街へ繰り出した。