【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第7章 潤色 - urumiiro -
その時…
家康様のまつげが微かに震えて、
ゆっくりと瞼が上がり綺麗な瞳が私を捉える。
「…亜子?」
名前を呼ばれたその声に反応するように、さっきよりボロボロと溢れる涙。
「…家康様、」
目を開けて私を見つめる彼がぼやける。
泣いてる場合じゃない。そう分かっているのに、全然涙が止まってくれなくて。そんな状態の私を静かに見つめていた。
「…ッ、ごめ、んなさい、」
「………俺はどれくらい眠ってた?」
「丸一日くらいです…、」
「そう。」
ひとしきり泣いてやっと落ち着いた頃、鼻をすすりながら謝れば、家康様はひどく冷静に自分の状況を訪ねてきた。感情を押さえつけてるみたいな表情の家康様に、息が苦しくなって、ふらつきながら立ち上がる。
…今私の顔なんて見たくないかもしれない。
「…皆さんに、目が覚めたことを伝えて着ます。」
そう言って部屋の襖を閉めると、
中から畳を拳で叩きつける音がして、私は、初さんや家臣の方に彼が目覚めたことを知らせると、部屋に篭った。
…嫌われても仕方ない、
…怒っていても仕方ない、
私が蒔いた種だもの。家康様にとって私は顔も見たくない存在になっただろう。
許してくれるなら、
精一杯看病しようと思っていたけど、私に出来ることは何もない。
歯がゆくて、
申し訳なくて、
またひとしきり泣いた後に、気を失うように眠りについた。