【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第5章 若菜色 - wakanairo -
ーーー数日後。
毎日、家康様の御殿の女中さん達が部屋に食事を運んでくれたり、何だかんだともてなされて、私がしていることといえば、雪ちゃんとのお勉強だけ。
あまりにも時間がありすぎて、
小袖だけじゃなくて華やかな着物の着付け方から、この時代の日常のいろはまで、この数日間でマスターしてしまった。
「ひまだなあ、」
「…亜子様、明日は三成様が字を教えにいらっしゃいますし、今日はのんびり過ごして下さい。」
「うん…、あ、ねえ、雪ちゃん。」
「はい。何でしょう?」
「台所の場所って分かる?」
「はい、知っていますが…、喉が乾かれたのですか?なら私が、」
「あ!いいの!案内してもらえるかな、?」
勝手に御殿の外には出られない。
家康様に許可を頂いて、雪ちゃんと一緒なら出ても構わないかもしれないけど、家康様には全然会わないし…。ならこの御殿の中で、できることをやるしかない。
数日前は部屋に篭ったり、城を抜け出したりしてしまったけど、何だかんだこの時代の普通の生活に、慣れ始めている自分に驚く。この時代で生きて行けるはずが無いと沈んでた自分に呆れるくらいだ。
雪ちゃんに案内してもらって台所に足を踏み入れると、中にいた女中さん達が丁寧にお辞儀してくれる。
「亜子様、どうかされましたか?」
「あ、いえ。ただ今日の昼餉は自分で作ろうと思って、」
そう言うと、
「そんな、お怪我をされてはいけませんし、」
「私共がやりますゆえ、お部屋にお戻り下さい。」
「お腹が空いていらっしゃるなら、今すぐ何かお持ち致します。」
と、女中さん達が口々に言って私を止める。
この時代のお姫様は、一体何をして過ごしているんだろうか…。掃除も料理も、着替えだって手伝ってもらっているなら、自分ですることなんて何もない。ただ、遊んだり外出したり好きなことだけして暮らしているんだろうか。
…私には縁の無い生活だった。
だからこそ、贅沢かもしれないけど、退屈すぎる。