【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第2章 月白 - geppaku -
ずっとデザイナーになるのが夢だった。
なんとなく面接を受けて内定をもらった会社に勤めていたけど、どうしても諦めきれなかった夢。
必死に努力して勉強して、
やっと夢を叶えて、
今日はそのご褒美にと一人で京都を訪れている。
(…ちょっと遅くなっちゃったな、)
歴史上の重要な出来事のひとつ。
誰もが知ってるだろう、1582年…織田信長が、明智光秀に裏切られて自ら命を絶つこととなったといわれる本能寺の変。
なぜ一人旅で、本能寺を訪れることにしようと思ったのか。有名な地なのに行ったことないなあ、なんてただの思いつきに過ぎないけれど。その跡地に行くのが私の目的だったのに、目を引かれて入った呉服店で、とても親切なお店の人に着物の仕立てについて聞いていたら、つい時間を忘れて話し込んでしまった。
日が暮れかけていて、辺りはだいぶ薄暗い。
完全に日が暮れる前に宿に帰ろうと思い、本能寺の小さな石碑に手を触れると、何処からか濃く重たい雲が現れて太陽を覆った。
「…雨降りそう、」
晴れてたから雨具は持って来ていない。
早めに帰ろうと思い踵を返すと、向こうから白衣を着た眼鏡の男の子が歩いてきた。
本能寺の跡地に白衣を着た男の子。
その少し違和感を感じる光景に、思わず足を止めて見入っていると、ポツポツと雨が降り始め一気に土砂降りになった。慌てて軒下に移動すると、
「弱ったな、」
彼も傘を持っていなかったのか、私の直ぐ横に移動して空を見上げてため息をついた。
不穏な雲は、光を宿して、時折轟く。
「…天気予報外れちゃいましたね。」
「…ぁ、そう、ですね。」
全く止みそうにない雨。
同じ状況に置かれた彼に少し仲間意識が生まれて話しかけると、彼は今の今まで私のことを気づいてすらいなかったかのような反応をした。
それが面白くて、小さく笑ったその時だった。
ピカッ
と頭上を稲妻が走る。反射的に頭を守ると、
ドドーンッ
という凄ましい衝撃音が響き渡り、目の前の石碑がぱっくりと二つに割れた。