• テキストサイズ

【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -

第15章 濃紅 - koikurenai -


〔 家康目線 〕



残ってる問題はたくさんある。

萩姫のことや亜子が未来からきた話を信長様たちに伝えることもその一つだ。だけど、その前に目先の問題を片付けなきゃならない。

しっかりと、

捕まえたばかりの亜子の手を握って話し出す。



「俺があんたを迎えにいってる間三成と信長様が時間を稼いでくれた。」
「…はい。」
「戦は終わったよ。でも一つ問題が残った。」
「…え?」



きょとんとした顔のその子の手を強く握り直すと、何も分かっていない彼女にも分かるように説明をする。

上杉が名前のことを

“信長様の妾”

そう思って連れ去ったなら、

その情報源は顕如だ、そう信長様は踏んでいる。きっと今回の戦を大きくして、横から信長様の首を狙っていたのだろう。上杉謙信は自尊心の高そうな男だったから、顕如の手の上で転がされたと知れば、こちらに協力するかもしれない。



「あの男はただの戦好きなだけだから、織田軍に何の因縁もないし。」
「…確かに、そう仰っていました。」
「そう…。だから、今日奴に協定を申し込んだ。」
「え…?」



亜子を利用した事は許せない。

それに、上杉との対立は避けられないにしても、俺たちにとって一番邪魔な存在は顕如だ。あいつの流した情報がなかったら、この子を巻き込むことにはならなかった。



「信長様も納得してくれた。明日会談が開かれる。」
「そう、なんですね。」
「でも、向こうも条件を出してきて、…それが、あんたの同席。」
「…え?…私の、」
「うん。だからさっき質問したんだ。ひどいことをされたなら、もう顔も見たくないだろうと思って。」
「…それは、大丈夫です。でも、何故私が、」



訳が分からない。

そんな顔をする亜子を見て、思わずため息をつく。

ひどい扱いをされてはなかったとはいえ、自分を捕らえて牢に入れていたような男なのに、大丈夫、って。どこまでお人好しなんだろう。

それに、

この子はまったく気がついていないみたいだけど、なんとなく上杉がこの子の同席を条件に出した理由が分かってしまう自分が嫌になる。

…上杉の顔も見たくないと言ってくれたらいいのに。



/ 240ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp