【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第12章 深紫 - fukamurasaki -
「雪、貴様は政宗と光秀の元へ行け。」
「…信長様、私は、」
「上杉の忍びに貴様は顔が知れた。亜子の救出に向かうのは無謀だ。この知らせとともに光秀の元に戻り、謙信の掴んだ噂の元を辿れ。」
「…畏まりました。」
亜子の救出に向かいたい、
そう顔に書いている雪も、信長の言葉に奥歯を噛み締めて返事をすると直ぐに姿を消す。
彼らの考えが正しければ、
噂の根元にいるであろう男の顔を思い浮かべて、
信長も戦に向かう準備を始める。
亜子が拐われる前に、
家康の怪我の話を知らなかったのが唯一の救いだろう。これを知っては夜も眠れぬはずだ。
家康はこの噂を聞いてどんな反応をするのだろうか。
己の身一つ大事にできぬ男が、好いた女を守ることが出来るのだろうか。
彼奴の焦る顔が眼に浮かぶ。
信長は
亜子の耳飾りを眺め、
彼女の最後に見た夜の儚い笑顔を思い出していた。