【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第11章 路考茶 - rokoucha -
「何してるのそんな所で。」
「…星を、…みようと思って………。」
「確かに星はよく見えるけど…、今日は冷える。早く部屋に入りなよ。」
「はい…。」
ひっそりとした廊下。
ふわりと私たちの間を通り抜ける風は、確かに冷たい。でも、今の私にはそれがちょうど良かった。乱れた思考が冴えて行くようで。
優しく声をかけてくれる家康さんに、曖昧に頷くと、彼ははあっとため息をついて、私の横に腰かけた。
「「………。」」
手を伸ばせば、
触れられる距離にいる。
それなのに、とても遠い人。
「…戦に向かわれると聞きました。」
「うん。後数日後にはここを発つ。」
無言の空気に断ち切るように、そう話しかけると、迷いも何もない真っ直ぐな言葉が返って来て。
私の不安や心配は要らない、と
そう言われているみたいだった。それでも、と懐からさっき出来上がったばかりの巾着を取り出す。
「迷惑かもしれませんが、」
そう言って彼にその巾着を手渡すと、家康さんは目を丸くして固まった。それに構わずに言葉を繋ぐ。
「…中身は御殿に帰ってから見てください。」
届かない気持ちを全部、
伝えられない気持ちを全部、
叶わない気持ちを全部、
彼を想う気持ちを全部、
これに精一杯込め込んだつもりだから。
「…分かった。」
そう言って彼が懐に巾着をしまうのを見て、なんだか涙が出そうだった。
…最初は嫌われているそう思っていて、
でも、一緒の御殿で暮らすうちに優しさに触れ、
どうしようもなく焦がれてしまった。
素っ気ないし、何にも興味のないようなのに、さり気ない優しさをくれるそんな彼に惹かれないわけがなかったんだ。御殿にいる間、あまりにも近い距離にいすぎたのかもしれない。
溢れそうな涙と気持ちをグッと堪えるように下を向くと、頭に温もりを感じて、また涙がこみ上げてくる。