【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第9章 舛花色 - masuhanairo -
「一つ目。…君のことがあちこちで話題になってる。」
「…うん、織田家ゆかりの姫について、だよね?」
「知ってたんだ。信玄様の耳にまで届くくらいだ。何か困ったことにはなってない?」
「恋文、が、届いてるくらいかな、」
厳しくなった佐助くんの顔。
私も思わず身構えていると、一つ目は、つい最近知った私の噂についてだった。敵の将にまで広まっているような噂なんだ…。何でそんなに噂になっているかは知らないけど、まだ困ったこと、は起きてない。
萩姫様に怒られたことと、
毎日届く恋文のこと以外は。
「顔も見てないのに、不思議だよね。」
「この時代ではそれが普通だから…。」
「そっか、でも大丈夫だよ。返事は、うん、誰にもしてないんだけど、まだ困ったことにはなってないから。…もう一つの方は?」
「うん、こっちが本題だ。」
少し気味が悪いけど、
返事は出していないし、特に気にしてないから大丈夫だろう。そう思って次の話に進める。
「…ワームホールの出現について、観察を続けていたんだけど、」
もしかすると、また開くかもしれない。
その言葉に、胸がドキンと跳ねた。
「でもすごく小さいんだ。これを逃したら現代に帰ることはできないかもしれない。」
「…え?」
「それに、帰ることが出来たとして、もしまたこっちに戻りたいと思ってもそれは叶わない可能性が高い。」
「………、」
「俺は正直迷ってる。家族は簡単に捨てられない。きっと向こうでは両親が俺のことを必死に探してくれてるはずだ。…でも、この時代にも大切なものができてしまった。だから、迷ってる。…君はどうしたい?」
そう言われて言葉に詰まった。
佐助くんは、私より長くこの時代にいる。
だからきっと、この時代に思い入れがたくさんあるだろう。
…私は、わたしはどうしたいんだろう。
「ワームホールが出現する日付はまだ分かってない。分かったらすぐ君に伝えに行くよ。
…それまでゆっくり考えたらいい。」
うん、その言葉にゆっくり頷くと、甘味屋をあとにして、トボトボと城に帰った。
あまりに考え込んでいたから、
雪ちゃんがわたしの姿を見て、大袈裟なくらいとても安心していることに気づかなかった。