【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第9章 舛花色 - masuhanairo -
家康様の御殿から安土城に向かう道のり。
「家康様からはどこまでお聞きになりましたか?」
三成くんはスマートに私の荷物を持つと、私の歩幅に合わせて横を歩いてくれる。
突然のことで、流れに流されるまま城に戻ってるから、何がなんだかわかってない。
そんな私を察してくれたのか、
三成くんは一から説明してくれた。
「今日私が信長様から言付かったのは、
家康様の復帰と同時に名前様を安土城に戻す、
という内容です。
亜子様を襲った浪人が、貴女の情報をどこから手に入れたのかわからない状況だったため、亜子様は家康様の御殿に移されました。
情報を入手した場所や手段がわからない以上、城の中も危険だと判断されたのです。
ですが、その浪人も仲間も今は安土城の牢の中です。時期に全て明らかになる。
信長様は亜子様が狙われる危険も無くなったと判断されて、城に戻るよう命じられたのです。」
待って…、
じゃあ、私は何も知らずに、家康様に、
「…見張られてたんじゃなくて、守られてたの?」
「家康様はお優しい方ですから、」
亜子様が心配しないように、と気遣ってくださったのではないでしょうか。
そう困ったように笑う三成くん。
心に何とも言えない気持ちが広がる。
きちんとお礼もできないまま城に戻る後悔や、何故今日すぐ城に戻されたのかわからないこと、…寂しいという気持ち。一緒の御殿にいたからこそ近づいていた距離が、何だか離れていくようで。
色んな感情がごちゃ混ぜになって苦しい。
別れ際、
『…じゃあ、また、城でね。』
また、と家康様がそう言ってくれなかったら、
もう二度と会えないようなそんな感覚を、拭うことは出来なかっただろう。