第14章 紙魚の恋心 ~黒子テツヤ~
もしかしてテツヤ君ー?
私のそんな期待は、彼が高校に入学してすぐに、間違いないという確信に変わった。
「おい黒子、オメーそれもしかしてNBA選手の特集号か?」
「そうですよ火神君」
「これジョーダンの号じゃねぇか!!俺買い損ねたんだよ。ちょ、貸してくれよ!!」
「良いですけど栞無くさないで下さいよ?」
「shiori…?ああこれか。…しおりって何だ?」
「…無くされそうなんでやっぱり貸すのは無しです。今読んじゃって下さい」
「ンだよ、こんな頼り無さげなヤツがそんなに大事なのかよ?」
そんな問答を経て、私は燃えるような髪の毛の男性の眼前に連れてこられた。
返して下さいとやんわり私を引き寄せるテツヤ君。
テツヤ君を見れば、この火神君と呼ばれた人のことを深く信頼しているのは間違いないと分かる。
ああ、まるでテツヤ君に初めて会ったときみたいに楽しそう。
そんな表情を見れただけでも嬉しいのに、テツヤ君は私を更に舞い上がらせるような言葉を紡いでくれた。
「ええ、いつもボクに大事な言葉を示し続けてくれていましたから」
「ふーん。ま、諦めるなんてありえねぇーけどな」
私が見ていた名言を一瞥し、テツヤ君の方に拳を突き出した火神君。
ちょっとビックリしたみたいに目を見開いてから、柔らかく笑ったテツヤ君がその拳に自分のを合わせた。
ああ、テツヤ君はきっと大丈夫。
そうして私は2人にバレないように、そっと笑ってまた文字の波に身を任せたのだった。
fin
→あとがき