第12章 俺たち海常男バス部!!~海常~
「何でだろう…」
「わか(り)たくないっす…」
「俺たちに眩しい夏は来ない運命なのか!?」
「黄瀬、折角レクチャーしてくれたのに悪かったな」
「笠松センパイ…いいんッスよ…」
花火、浴衣、海水浴。夏の風物詩だが、どれもこれも女の子が居ないと話にならないと息巻いた(主に森山が)2時間前。
遠い目をする小堀、項垂れる早川、運命を呪う森山、げっそりと憔悴した笠松、苦笑いの黄瀬。
黄瀬のモデル仲間との合コンをセッティングしてもらったと言うのに、あろうことか女の子そっちのけでバスケ談義で盛り上がってしまった5人。
相手の女の子達の冷ややかな目線に気が付くも時は既に遅し。好きなだけ5人で語れよという手厳しい捨て台詞を残し女の子達は帰ってしまった。
残ったのは、フォーメーションなどを記した大量のメモ、すっかり汗をかいて温くなったドリンクのみ。
(((((俺らの夏、終わったな…)))))
皆の心境が一致した瞬間だった。
『あれ?黄瀬くんと先輩達?どうしたんですか?』
「…、聞いてやるなよ」
『え?』
誰も"帰ろうか"とすら言う元気が出ない状況のなか、ここに居ないハズの声が聞こえて5人とも弾かれるようにそちらを見た。
「おー、中村兄妹じゃないか。今日法事だったんだろ?もう終わったのか?」
「はい、思ったより親戚のおじさんたちが酔っぱらうのが早かったんで早々に退散してきました。…にしても、そちらは予想通り過ぎる展開だったみたいですね」
「ばっ、う(る)さいぞなかむ(ら)ぁ!!」
ダメージから回復はしていないものの律儀な小堀がそう返せば、兄の方が眼鏡を直しため息を付きながらそう言った。
それに噛みつくように反論する早川だが、如何せん事実過ぎて援護射撃出来る者は居ない。
そもそもそもバスケばかりに集中していた自分達が、黄瀬の助けがあったとは言え女子とウフフアハハな会話を楽しめよう筈が無かったのだ。
むなしく空いた席に目をやり、フッと遠い目をする残念な男たち。
中村(兄)は冷ややかにそれを見つめた後、愚痴大会という名の精神修行に付き合わされないうちに可愛い妹を連れて退散しようと決めた。