第11章 平穏ってなんだっけ~キセキ+α~
夢見が最悪だった。
『ぅあー、もうこんな時間…?』
高3になってすぐのなんてことのない放課後、図書委員として仕事に勤しんでいたある日の事。
司書研修があるとかで慌ただしく図書室を飛び出した先生から鍵を預かり、たった一人カウンターに肘をついて座っていたのだが、利用者はゼロ。
そりゃそうだ、本日テストが終了し規制されていた部活は再開、帰宅部ならば自由な時間よこんにちは、なこの日に図書室を利用すると言えば、余程の本好き位なものだ。
そして、そう言う子達はとっくに此処を訪れ目当ての本をゲットしている。
普段と少し違うのは、皆さんそのまま図書室で読まず帰宅しているという所か。
テストから解放され、自分の部屋という名の城で好きに本が読める今日の事だ、私だってそうするだろうから別におかしくはない。
そんな事を考えて居たらまさかの寝落ち。
そして冒頭で述べたように夢見が最悪だったのだ、胸糞悪いったらありゃしない。
さっさと帰りたいのに寝落ちて悪夢見るとかどういう事なの。
自分に悪態をつきながら図書室の鍵を掛け、職員室に向かう。早く鍵を返してしまおう。
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職員室で鍵を返し、さて帰ろうと踵を返した先に見知った顔。
『うげ…』
「おー、良いところに。スマンがこれな、体育館に居る奴に渡してから帰ってくれるか?」
どうせ暇だろお前、と続けたのは従兄弟にしてこの学校の教師でもある人物。
『だが断「数学14点、お前のかーちゃんに」…やらせて頂きます』
教師違った脅迫者だったわ。
テストは今日で終わりだが初日にあった数学は既に結果が分かっている。そしてこの従兄弟は数学担当。
……ジーザス。
追試で受かれば母親には内緒にしてくれるとの報酬を餌に、渋々預かったファイルを手に体育館へ足を運ぶ。
結構な時間だがウチは強豪校であるので、件の人物は毎日居残り練習をしているそうだ。もし居なかったら俺の机に置いといてくれ、そう言い残し従兄弟は職員会議に行ってしまった。
チラリと目線を上げれば煌々と灯る体育館の灯り。成る程居残り組が居るのは本当らしい。
願わくば目的の人物が居ますように。
そう思いながら戸に手を掛けると一瞬ビリっと強めの静電気が襲ってきてチッと舌打ちが漏れた。