第10章 つまりはそう、キミのせい ~赤司~
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物事を前向きに考えるのは割と得意なんだけど、今日はちょっと、いやかなりツイてないみたいだ。
朝、ベッドを降りようとした時に最初の悲劇が起きた。
バキャァ
再起不能な事が丸わかりな音を立てて眼鏡が割れた。踏んづけたのは自分だし小説読んでて寝落ち寸前におかしな所に眼鏡を放置したのも自分だから同情の余地なし。
見えないことこの上無いけど今日はこれで過ごすしかない。幸い今は春休み、部活も午前中で終わる日だ。
気を取り直して朝練行こうかと通学路を歩いていると昨日告白してくれた男子から電話。いそいそと出てみれば、やっぱり別の子が好きだから別れてくれときた。お前は一人でも大丈夫だけどあいつは俺が居なきゃとか何とか。
『は、ちょ、』
じゃーな、ブツ、ツーツー……
ってえええぇぇぇ!?
こちらが何か言う間もなく一方的に切れた電話。
いやまさかこんなテンプレな台詞で別れを切り出されるとはって、しかも電話で済ますのかよとかそういや告白も電話でしてきたなコイツ、とか。
まだちゃんと顔も合わせてないのに一人で大丈夫ってドコ見て言ったのとか。そして気が付いてしまった。…これ、いわゆる罰ゲームで告白ってやつじゃないか、と。
電話の後ろから聞こえた揶揄するような声を思いだし、一気に気分が沈む。あ、確定だわこれ。
ところで話が変わって申し訳ないけど、往来でそんな事をぐるぐる考えていた私が悪いのか歩道にハイスピードで乗り上げて来た自転車通勤のおっちゃんが悪いのか考える必要もないと思うんだけど、どう思います?
とにかくその非常識なおっちゃんに気が付いて避けようとした私の手から、防水機能なんてあるはずも無い携帯が滑り落ちた訳ですよ。そしてドンピシャで水溜まりにin。
拾い上げるも当然お陀仏。ちーん、だ。
あれかな、昨日私思いきって髪の毛切ったんだけどさ。割ともっさい見た目なの自覚してたから、人生初の告白に浮かれて、相手にとって自慢の彼女になれるよう頑張ろう、みたいな、ね。いや相手の事名前とサッカー部らしい事しか知らなかったけどさ。
幸い大事な画像やメール、アドレスなんかのデータは携帯を購入した店で保存して貰ったばかりだから、消えるのはそれ以降に追加された、奇しくも告白してきた男子のアドレスのみだ。