第4章 さてその他は皆狂気の沙汰~黒子~
待ちに待った放課後。今日もバスケ部のマネージャー業頑張るぞ、と気合い十分の私。黒子のいる隣のクラスのHRも丁度今しがた終わったようで、どうせなら一緒にいこうと思い覗いて見る事にした。
黒子は窓際3列目の一番後ろと言っていったのでソコを見るとちゃんといた。居ると分かっていればちゃんと彼を見つけられるようになったのは、密かに私の自慢だったりする。何か彼に夢中みたいで(夢中だけど)悔しいから言わないけど。
帰り支度をしているようで、こちらには気が付いていない。
ーここでちょっとしたイタズラ心が沸いた。
黒子はいっつも人を驚かせてるから、たまには逆に驚かされても良いと思うわけですよ。
黒子のクラスの担任も既におらず、教室内はガヤガヤしている。
そっと教室に入り、黒子の席の後ろに立つ。ここはやはり定番のあれでしょ、って事で。
『だーれだっ』
「・・・っ」
おお、予想以上の反応・・・!!
面白い位に肩が揺れ、覆った手のひらに微かに触れる睫毛がくすぐったいと思えるくらい忙しなく動く。しかし大声を出さない辺り流石過ぎる。
『なーんてね。ビックリしたっしょ?』
手を少しずらしてニヤニヤしながら顔をのぞきこむと、じとっとした目で睨まれた。
「さん・・・あんまりふざけてるとしっぺ返しを喰らいますよ?」
『へ?うわぁっ』
黒子に手を掴まれたと思ったら、ちゅ、と言う音と共に手首に柔らかい感触。
咄嗟に手を引いて、大声を出したのは私の方だった。当の本人はしれっとしている。
「ほらね?部活に行くんですよね、一緒に行きましょう」
そう言ってさっさと荷物を担いで戸口へ向かう黒子。
黒子のクラスメイト数人から訝しげな視線を送られていることに気が付き、慌てて黒子の後を追う。(そりゃ周りから見たら他のクラスのヤツが1人でいきなり奇声上げたようなもんだ)
『~この天然タラシ!ヘンタイ!!』
「え?しっぺ返しが足りないんですか?」
『ナンデモナイデス』
横に並んで文句を言うもののあっさり返されグゥの音も出ない。
結構テンパっていた私には、黒子の耳がほんのり赤くなっていた事に気が付く余裕もなかった。
キスが貰えるんならまた驚かせたいな、なんて懲りない事を考えたある日の放課後のお話。