第17章 フェアリーテイルをご一緒に 赤司
「…」
恐る恐る声を出すが、もう猫の鳴き声はしない。多少掠れてしまったがきちんと自分の声が出た。
人間に、戻った。
「、、『服着ろよバカ司ィィィ!!!』…っぐっ」
自分の腕からに視線を戻し言葉を紡ごうとするが、僕の格好にテンパったらしい彼女が手刀を頭上に落として来たためそれは叶わなかった。
そうだ、猫になったとき服は全部ー。そこで漸く思考も追い付いて来た。慌てて体の下にあったタオルで前を隠し生徒会室に入る。
幸い僕が出た後誰も生徒会室には足を踏み入れ無かったようだ。手早く衣服を着用してドアへと踵を返す。
僕がドアを開けてもはしゃがんだまま、自分の言動でも思い返しているのか、相変わらず耳まで真っ赤で頭を抱えていた。
それがなんだか妙に可愛くて笑ってしまう。
キスで元に戻るなんて何処のお伽噺だろうね、でもそれだとが王子様かな、とか。
この眼を気に入ってくれてたなんて嬉しいな、とか。
僕は不器用みたいだからね、これからもが傍で支えてくれるかい、とか。
ねぇ、僕が楽しいと思える事に協力してくれるんだっけ?君となら男女のお付き合いってヤツを僕も楽しめそうなんだけどどうかな、とか。
「ねぇ、僕からもキスを返していいかい?」
色々と伝えたい事はたくさんあるけれど、まずは抱き締めてキスがしたい。
緩む頬を自覚しながらの顔を覗き込むようにして質問すれば、ちらりと上目遣いで睨むように見上げてきた。
全然怖くないよ。そう言う思いを込めて更に笑みを深くして答えを促せば、観念したように小さく頷いたのだった。
ー猫になるのも悪く無いけど、やっぱり人間の姿が一番だね。そう言って僕は今度こそをぎゅうっと強く抱きしめたのだった。
fin
→あとがき