第17章 フェアリーテイルをご一緒に 赤司
うたた寝して起きたら猫になっていました、なんて。
(あり得ない…)
------------------------------
洛山高校の生徒会室内。
資料に不備があると連絡を受け自主練もそこそこに訪れれば、待ち構えていた教師は僕の姿を見るなり目に見えて動揺した。
その反応に、やはり僕が来てよかったという思いが強くなる。
本来呼ばれていたのは僕と同じ1年ながら生徒会書記を務めるだった。
だがこの教師が、仕事にルーズなだけでなく複数の女子生徒に不埒な所業を繰り返しているという噂は生徒の中では有名で、わざわざ放課後に彼女を名指しで呼び出すなんて怪しんで下さいと言うようなもので。
同じバスケ部でマネージャーとして働く彼女に、部員の自主練の記録を頼む事を建前にして代わりに召集に応じたと言う訳だ。
書類の不備を指摘した割には手ぶらのその教師に、苛立ちを抑えながらあくまでも"優等生"の顔で不備の内容を確認する。
そもそも彼女が作成した資料に何ら不備が無いことは、僕が提出前に確認している。それを知らないらしいこの教師が一体何を言うのかある意味見物だ。
僕以外の人間が彼女を呼びつけるのなら、相応の理由があって然るべきだ。
しかし教師からたどたどしく告げられた不備とやらは"ゴシック体ではなく明朝体で作成を"との事らしい。
あまりのくだらなさに失望を隠しきれないでいると、その空気を察したのか、教師は修正出来たら添付ファイルでメールしておいてくれ、と言い残し足をもつらせながら出ていった。
これまで要領と上司へのゴマスリは一流なあの教師の"状況証拠"を揃えるのにはとにかくイライラさせられたが、よりにもよってをターゲットにしたのだからもう我慢ならない。
あの教師は社会的に抹殺で決定だ。
教師が去っていった扉を一瞥し、一息ついて椅子に腰かける。少し錆びたパイプ椅子が耳障りな音を立て、余計に神経に障る。
電源が入るまでの時間とこの"不備"を修正するのとどっちが時間がかかるのやら、とため息を付きつつパソコンの起動を待つ。
思った通り一瞬で不備は修正され、教師宛にメールで送れば仕事は終了した。