第16章 さぁ、幸せな結末を ~洛山+誠凛~
試合終了を告げるブザーの音。
得点板は1点差で誠凛高校の勝利、つまりWCの優勝をもぎ取った事を示していた。
凄く、物凄く良い試合でした。
あの赤司くんがチームプレーをした。
帝光時代に変わってしまって以降、自分以外を駒のように見ていた赤司くんが、です。
正直それまで個人技で攻めていたのが嘘のように洛山のチームワークが良くて、本当に勝てたのが不思議な位です。
誠凛の最後のシュートの時、赤司くんはひどく穏やかな顔で笑っていた。その目線の先にはさんが居て、彼女もまた同様に。
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嵐の前の静けさとでも言うように、大歓声が巻きおこる前の会場内に訪れた刹那の静寂。
耳が痛くなるんじゃないかという錯覚を覚える位の静けさの中、誰より早く動いたのは彼女だった。
次いでぐらりと傾いだ鮮やかな赤髪の、かつての僕らの主将の身体。
そして2人が動くのを待っていたように激しく沸く会場。体育館そのものが震える位の熱気がここまで届く。
ー赤司くんが倒れる。
そう認識したときには既にさんがその身体を支えていました。
『赤司、倒れるのは整列して挨拶してからでしょ!……ってバカ!!アンタも必要に決まってるだろバカなの死ぬの舐めてんの!?』
支えられながら何事かをさんに呟いた赤司くんは、ものすごい勢いでディスられてデコピンされて悶えていました。
赤司くんにあんな事出来るの、きっとさんだけですね。
でも彼女がそのあと小さな声で何か言って、赤司くんがギュウっと抱き締め囁けば、口を押さえみるみる真っ赤になるさん。
もう片方の手には保冷剤らしきものを持っており、赤司くんの左目の瞼に当てています。
全く、相変わらず準備が良いですね。
赤司くんと、「離せ」「嫌だ」と問答しながらアイシングをする彼女。
逃げたいけど眼を冷やす必要があるからと葛藤しているんでしょうね、きっと。
僕は僕で、ベンチから飛び出して来た監督達にモミクチャにされていた。