第12章 願う幸せ
リヴァイside
翌日、俺はさっそく商人ノーマンのところへ、改めて「養子」の話をつけに行った。
ユナの病についてなど条件を出した上で、ノーマンの友人で真の依頼者でもあるクライス・タイラーに直接面会をした。
クライス・タイラーの印象は、真面目で優しげな紳士で、下級貴族の称号もあるという。
亡くなった娘のマヤの肖像画を見せてもらうと、確かに、どことなくユナに似ている少女だった。
また、条件としていたユナの医療機関への受診をタイラー氏に願うと、快く承諾してくれた。
地上で未来ある生活を送れること。
医療をしっかりと受けられること。
最低限の約束を取りつけ、これで俺は安堵した・・・はずだった。
しかし、心にあるのは虚しさと喪失感だった。
ユナは、あと数日でこの地下街から地上へ出られる。
それを望んだのは、ほかでもなく自分であるのに、やりきれない想いが俺を苛立たせていた。
ノーマンの所から戻る途中、声を掛けられる。
「よぉ、リヴァイ。お前のところのユナ、どこかの豪商に売り渡すんだってな?いい女になってきたもんなぁ!高く売れたかぁ?手塩にかけといて良かったなぁ!ははっ!!」
「!!!?」
シャッ
気づいたら、そいつをナイフで切っていた。
「クソが・・・」
もう、どうでもいい。
ユナはいなくなる。
俺の前から。
そう望んだのは俺だ・・・ユナの幸せを望んだ。
むしゃくしゃした俺は、ナイフを持ったイラついた俺を見てくる奴を片っ端から殴りとばしてやった。