第6章 守る術
「いいか、この地下街では自分を守る術を持たなくちゃ生きていけねぇんだ。」
ケニーは言いながら、慣れた手つきで持っていたナイフを何度も器用に空中で回転させてキャッチする。
「だが、お前は女だ。力で男に敵わないこともあるだろう。だからこそ、賢く動く必要がある。お前は身軽ですばやい。物理的な力で勝負できねぇ相手には、機転とスピードで挑め。」
そう私に助言してくるが、私はケニーからのしごきに指も動かせない程、体がくたくたになっていた。
至るところに擦り傷や汚れのついた体を仰向けにして、肩で息をしていると、リヴァイがやって来た。
「何やってやがる。こいつにこんなことを仕込まなくとも、俺がいる。それでいいじゃねぇか。」
リヴァイはぐったりと寝そべる私を横目に、ケニーに凄む。
しかしケニーは片方の口角を上げて言う。
「ほぅ、お前がそんなこと言うなんてなぁ・・・本当にそれでいいのか?ここで生きて行くためにはなぁ、最低限、自分の身は自分で守れなきゃならねぇ。それとも何か?お前はいついかなる時も、四六時中ユナのそばにいて一生守っていくとでも言うのかよ?・・・先のことなんて誰にもわかりゃしねぇし、どんな環境でどんな敵が相手になるとも知れねぇんだ。これはユナのためでもあり、お前自身のためでもあるんだぞ、リヴァイ。」
「うるせぇ!クソが!!」
突如、リヴァイは持っていたナイフをケニーに振りかざし、すかさずケニーもナイフで弾きかえす。
「久しぶりにお前も鍛えてやるよ。」
ニヤッと笑い、ケニーはリヴァイの蹴りをかわしながら楽しそうに相手をするのだった。